東九条CANフォーラム設立趣旨文

2009年5月10日 設立総会にて採択

◎「多文化共生のまちづくり」をめざして!

 

 東九条は京都市の中で最も多く在日外国人が居住する地域です。戦前から戦後にかけて、この地域では民族差別や貧困にあえぐさまざまな境遇の人々が肩を寄せ合い生きてきました。1960年代以後、廃品回収に従事する人々の集落は度重なる大火災により、着の身着のままに焼け出され、人が焼け死に、深刻な社会問題として京都市民が認識するに至り、当時の京都市長も現地を視察し、問題の深刻さに「東九条対策」を約束しました。

 あれから約40年の歳月を経て人口は減少し(4ケ町約1/5,山王学区約1/3,陶化学区約1/2)、まちに活気が失われつつあります。この間、住民運動と京都市の協力により一部住環境等で一定の成果を上げたものの、それは東九条の抱える問題の一部にしか過ぎません。これまで行政主導で東九条は狭い範囲で限定されてきました(山王学区4カ町、陶化学区東松ノ木町など)が、東九条を捉える場合もう少し広い視点が必要で、特定の地域に限定する必要はありません。

 また、東九条が抱えている問題としての民族差別や部落差別、障がい者差別などを無くすための対策は著しく立ち遅れているのがその現状だと思います。最近ではアジアからのニューカマーや、新たな貧困層の流入などの新しい社会現象が見られます。今こそ東九条を「多文化共生が息づくまち」として再生する必要があります。私たちはもう一度、東九条の歴史や現状から根本的に問題を見直し、住民・市民運動と行政が共に手を携え、未来に希望の持てる「多文化共生のまちづくり!」をめざし、ここに「京都・東九条CAN(Community Action Network)フォーラム」を結成します。

 

1.東九条の歴史と現状

 

 東九条はJR京都駅南東に広がる地域であり、陶化・東和・山王学区にまたがる区域です。それぞれの地域や時代によって若干地域的特性に違いがありますが、私たちは東九条を在日外国人、被差別部落出身者、障がい者、単身高齢者が多く居住する地域としてのまちづくりについて考え・提言したいと思います。

 東九条の東側一帯は人口減少と高齢化が著しく、産業は廃れ、まち全体に活気が失われつつあります。これに対し、これまで行政は地元住民との協力で、特別養護老人ホームと市営住宅等が併設された「のぞみの園」や、3カ所の「コミュニティ住宅」(南岩本、高瀬川南、東松ノ木町)を建設しました。確かに住環境が整備され、まちの外観はすっかり変わりつつありますが、その一方で空き地が多くなり、かつての東九条ならではのまちの活気や、文化、人情、風景、臭い、音などが失われつつあります。私たちはこのような「まちづくり」に対し、より積極的に住民・市民運動と行政が共に持っている知恵や知識を出し合って進める東九条全体の「まちづくり」を提言したいと思います。そのキーワードとして私たちは「多文化共生のまち!」を掲げたいと思います。


2,東九条を「多文化共生のまち」のモデル地域に

 

 東九条の地域的特性を見ると、人口的には在日コリアン多住地域、ニューカマーと言われるその他の外国籍住民の流入、多数の被差別部落出身住民、障がい者と障がい者団体、独居や2人暮らしの高齢者所帯の高率化などが揚げられる一方、「希望の家」や「東九条マダン」など、多くの住民・市民団体があり、これまで数多くの実績を上げ、その歴史と人的資源は豊富です。また地域的には、JR京都駅、近鉄京都駅、市営地下鉄など公共交通の利便性に恵まれ、近くに鴨川と高瀬川が流れる環境の良さがあります。これらの地域的特性を生かした「まちづくり」が求められます。

 東九条地域にはこれまで地元住民や一般市民、外国籍住民などによる様々な市民・住民運動が展開されて来ました。これらの活力と人的資源を生かし、「多文化共生のまちづくり」のモデルとして、京都市などの行政と市民・住民、学者、企業など、全市民的な視点で進めていかなければならないと考えます。昨年「東九条CANフォーラム準備会」では各2回に渡り東九条のフィールドワークとワークショップを実施しました。その中で国際マーケットの創設や、韓国や他のアジア映画などを上映する映画館、韓国などのフードショップ店、国際的な飲食店街など、まち全体が活性化されるような具体的な東九条の将来の夢が熱く語られました。このような夢が実現するために、将来東九条には地域住民と共に、産業の起業、資本流入、人と人の交流と活性化、人口増加等の方策が必要だと思います。

 在日コリアンの歴史も2010年には100年になり、今や5世が誕生している時代です。また、近年韓国、中国、東南アジア、南米からの「ニューカマー」も増加、東九条は京都で最も国際的な地域と言えるでしょう。

東九条が「多文化が息づくまち」となることこそ、21世紀京都のまちづくりの指針となることでしょう。